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美味しい日本酒のお話

第四話 熟成 (その二


酒は、新しいほど良い?それホント? 

時の流れに味をまかせ…

 酒のラベルに表記してある「製造年月」は、ほとんどの場合、酒を造った(搾った)時期ではありません。瓶に詰めた時期、あるいは出荷の時期というのが一般的です。
つまり、何年も熟成させた酒を新たに瓶詰めしたり、出荷したりすれば、酒は古くとも日付は新しい商品になります。

 要するに、表示された製造年月よりも、いつ造られた酒なのかということのほうが、酒が新しいか古いかの目安になるわけです。

 蔵元は、酒の味のピークを見極めて出荷しようとしているはずです。
しかし、では、瓶に詰めてから時間が経てば経つほど味が落ちていくのかと言えば、そうではありません。
「瓶に詰めた酒は、劣化はしても、(良い意味での)熟成はしないのでは?」とお考えの方もいらっしゃると思いますが、酒は、瓶に詰めてからでも熟成します
ですから、熟成すればしたなりの味わいが楽しめるのです。
それと、きちんと保管された(冷蔵という意味だけではありません→後述)真っ当な酒なら、あまり日付を気にする必要はないということも申し上げておきます。
(酒は“生きもの”ではありますが、生鮮食品とは違いますので。 )

 ところで、竹鶴の酒は老香がする、とよく言われます。
もちろん香りは酒質に結びついたものですから、老香にも良し悪しがあります。
ひとりよがりな言い草ですけれど、私どもの酒の老香は、悪いほうの異臭とは違います(当たり前ですが、そう思っていたら出荷しません)。

 とは言え、酒は嗜好品なので、熟成した味や香りを嫌う人がおられても不思議はないでしょう。それでも、あえてそういう酒を造りつづけているのは、熟成によって変化(深化)する酒の魅力を味わっていただきたいからです。それに、熟成に伴う味や香りを好む人が多いことも事実ですし(私たちも大好きです)、決して不自然なものでないことだけはご理解いただきたいと思います。

冷やすばかりが能じゃない

 今回は、ここで、もう一つ「お酒の常識?になっている例」を挙げておきましょう。
それは、“良い酒は冷蔵庫で保管すべき”というものです。
吟醸酒、生酒などが商品として流通するようになって以来、管理するという言葉は、冷蔵することと同じ意味に解釈されることが多くなりました。
それまで酒の管理ということがあまり考えられてなかった反動からか、造り酒屋も酒販店・料飲店も、とにかく冷蔵庫で冷やさなければという強迫観念に駆られたように、冷蔵設備を導入したのです。
冷蔵庫の数や大きさが、品質管理の指標とされるようにもなりました。

 本来の意味での品質管理とは、その酒の持つ力を最大限に引き出すことのはずです。
確かに、酒質が変化しないように保つためでしたら、きつい濾過をかけ、とにかく低温で貯蔵するのがベストでしょう。
濾過をかければ、変化する成分が減って味は変わりにくくなりますし、貯蔵温度を低くすれば低くするほど、熟成の進みは遅くなります。しかしそういう管理は、酒に本領を発揮させることとは必ずしも一致しないのです。
熟成によって酒の旨さを際立たせようとする場合の「寝かせる」は、冷蔵庫などでただ冷やすことに限りません。冷蔵保存については、熟成させて変化を期待するというよりも、とにかく酒を劣化させたくないという理由のほうが強いように思います。

 では、冷蔵しなければ、酒の品質は低下してしまうのでしょうか。もちろん、そんなことはありません。日本酒を保存する場合、光(日光や蛍光灯の光)に当てたり、熱源(コンロやストーブなど)のそばに置いたりさえしなければ、常温保管でも問題はないのです(生酒以外で、酒質が強いことが条件ですけれど)。

 本当は、酒によって適正な貯蔵温度は違うはずです。どのくらいの温度で、どれだけ長く寝かせれば飲み頃になるのか、その方程式はありません。結果が出るのに時間のかかることでもあり、全国の蔵で、現在も試行錯誤が続けられています。

 みなさんも「これは!」と思う酒があったら、世界に一本しかないマイ熟成酒造りに挑戦されてはいかがでしょう。光が当たらないように箱に入れるか、紙で包むかして、押入れなど温度変化の少ない場所で何ヶ月、何年と寝かせてみると、気に入った酒の違う顔を見ることができて楽しいですよ。
不味くなっても保証はできませんけど(笑)。
竹鶴の酒なら、どうぞ何年でも熟成させてみてください。
少々寝かせたくらいでおかしくなるような造りはしていないつもりですので。

竹鶴酒造 杜氏 石川達也




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「吟醸酒は香りが命(その1)」

 
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