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美味しい日本酒のお話 

第八話 日本酒なら、やっぱり和食?


固定観念をぶっ飛ばせ!

 前回は、どんな酒が料理に合う酒か、というお話をしました。では逆に、そういう日本酒に合う料理は何か、というのが今回のテーマです。

 みなさんは日頃、日本酒は和食、西洋料理ならワイン、中華料理にはビールや紹興酒、といった公式で、酒を選ぼうとされていませんか。そういう組み合わせは、相性が良いに決まっています。
しかしそれは、「魚料理には白ワイン、肉料理には赤ワイン」というようなお決まり≠ニ同様の固定観念にすぎません。そんな、いわばマニュアルに従うだけでは、もったいないと思います。

 現代では、和風、洋風、中華風のおかずが、ひとつの食卓に並べられることも珍しくありません。
そんな食事の場で、「これには合うが、あれには合わない」とわがままを言うようでは、食中酒として失格です。
また、料理に合わせて酒を変えるというのも、日々の食生活においては難しいことでしょう。
でも、真っ当な日本酒なら、それ一本で大丈夫。
どんな料理にも、当たり前のような顔をして合わせられます。そういうことの可能なのが本来の日本酒ですし、そんな芸当ができることも日本酒の強みだ、と私は考えています。

 意外に思われるかもわかりませんが、肉料理や油を使った料理でも、日本酒はOKです。
たとえば、とんかつ≠ノ熱燗≠ェ乙なものだ、なんて言ったらビックリされるでしょうか。

 前回述べた、旨味と酸が備わった酒であることが条件になりますが、とんかつのような料理にも酒が合わせられるキーワードは、「熱燗」です。

 複雑な旨味と多様な酸が醸し出す味の幅が、温度の変化によって、もっと広くなります。
つまり、温度を変えて楽しめるという日本酒の特性が、料理との相性も広げるのです。

 また、肉料理などと合わせる場合には、温度による酒の味の変化だけでなく、酒の温度そのものも有効に働きます。油や脂肪分は温度が高くなればサラサラになり、低ければ粘り気が出たり、固まったりします。
肉料理に冷やした酒を合わせた場合、口の中で脂肪分が固まってしまい、味キレが悪くなります。
ところが、しっかりした酒をお燗して合わせると、脂肪分が口の中にまとわりつくこともなく、さらりと洗い流してくれるのです。

 このことは、老舗のすき焼き屋のご主人にうかがって「なるほど!」と思ったことです。
お燗には、酒が旨くなるというだけでなく、その温度自体にも効用があることを教えていただきました。

合わせ技(もう)一本!

  前回、酒が料理と合うポイントとして、旨味と酸を挙げましたが、食事の場で飲み続けられるためには、それに加えてキレの良さが必要です。

 「キレ」とひと口に言っても、さまざまな種類があります。
今述べた、温度によるキレもそのひとつです。前回触れた、「酸」によるキレもあります。

 酸は酒の味の一部でもありますが、酒自身と料理の味を受け止め、ズバッと断ち切る力があります。コクのある酒と味の濃い料理の組み合わせなどでも、厚みのある酸ならキレを生みます。

 後味を残さない、というキレもあります。完全発酵した酒ならではのキレですけれど、酸をナタだとすると、切れ味鋭い包丁のように、スーッと味を切ります。このキレは、最後まで元気に発酵してくれるよう、酵母を強くたくましく育てていないと備わりません。

 また、味を切るキレではなく、和三盆糖を使った上品な干菓子のあと口のように、余韻を残して消えていくようなキレもあります。このキレは麹によるものではないか、と私は考えています。

 優れた酒では、これらのキレが、互いに影響しあいながら、同時進行で起こります。その結果、飲み飽きすることなく、飲み続けられるのです。

 旨味と酸、それに伴うキレ。
この三拍子が揃っていれば、酒ひと口の中にもメリハリが生まれ、自分なりのテンポで楽しく飲むことができるでしょう。
そういう酒なら、合わない料理を探すのが難しいほど、あらゆる食べものとマッチします。
したがって、この際「日本酒には和食」という枠にこだわらず、「えっ!」と思うような料理と合わせてみられるのも一興ではないかと存じます。

 クセのあるチーズと酒。豚の角煮と酒。フレンチやイタリアンと日本酒だって、料理によっては、ワインに負けず劣らず合ったりします。
一見ミスマッチと思える組み合わせが予想外に良ければ、酒の力を再認識していただけるでしょうし、晩酌の楽しみが広がること請け合いです。是非お試しあれ!

 さて次回(第九話)は、酒の知識についてのアカデミックな(?)お話です。
竹鶴酒造 杜氏 石川達也




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第九話
「日本酒を楽しむのに知識は不要」

 
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