酒屋慶風/美味しさのかたち

【美しい走りに言葉は要らない。】

シドニーオリンピックのマラソンで、リニア・シモンとの駆け引きから、サングラスを投げ捨てて一気にスパート、そして独走態勢からゴールするというパフォーマンスを見せた高橋尚子。

もちろん金メダル。
もう、カッコいいとしか言いようがない。

マラソン中継と言えば、解説者とアナウンサーとのかなり詳しい具体的な解説が多く語られる。

フォームはどんな状態か。
疲れ加減はどうか。
駆け引きのタイミングはどうか。
その上、選手の心理状態まで想像してみせる。

しかし、あの時の高橋尚子の走りは、ヘタな解説など必要無いと思わせるほど素晴らしかった。

走っている映像が、景色と一体となっている。

そんな、感覚でテレビ画面を見ていたように思う。
それ程に、自然な走りは美しい。
だから、あのパフォーマンスもとても素直にカッコいいと見える。

正に、美しい走りに言葉は要らない。

なぜこんな事を引き合いに出すのかと言いますと、酒の味も、解説しなければいけないような味ではなく、言葉や理屈の要らない美味しさにこそその真髄がある筈。
そんな酒こそが本当に美味しい酒なのではないかと思います。

お米は何を使って。
どんな造りをして?
日本酒度はどれくらい。

ただただ応援しよう。
そして、高橋尚子の走りを堪能しよう。
こんなに素晴らしいマラソンレースを観せてくれているのだから。

ただただ、美味しい酒を飲み素直に杯を傾けよう。
その時、高橋尚子が投げたサングラスのような、ピンとくる美味しさを素直に感じる事が出来れば、もうすでに美味しさに包まれているのだから。
それこそが本当に旨い酒なんだから。



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